「外に出たければ出れるけどね」
「でも、ぼくは勇気が足りないから」
かーってうれしいはーないーちもーんめ
まけーてくやしいはーないーちもーんめ
「外で子どもが遊んでるよ」
「うん分かる。聞こえてる」
とーなりーのおーばさーんちょっとおいで
「このご時世はないちもんめだなんて」
おにーがこわくてよーいかん
「歌詞なんてもううろ覚えだね」
おかーまかぶってちょっとおいで
「というか、女子がやってた記憶しか」
「確かに」
おかまがないからよーいかん
「楽しいんだろうね」
ざぶとーんかぶってちょっとおいで
「ぼくは運が良かったから、最後まで残ることは無かった」
ざぶとんやぶれてよーいかん
「心遣いなのかもね」
「そうみたい」
あーのこがほーしい
あーのこーじゃわからん
「でも僕はあの中にはいつもいなかった。選ばれることなんてなかったから」
「そう」
こーのこーがほーしい
「僕はずっと見ていただけだから」
こーのこーじゃわからん
「ぼくはもうあの中に戻れない」
「僕と同じ所に来たのかい？」
「あそこには戻れなくて、」
そーだんしーましょ
「目が見えないから、他に誰がこの手をとっているのか分からなくなってしまって、」
そーしましょ
「…ぼくは何処にいるんだろうか」





「いいんだ。なんでもない」

きーまった。



(彼はずっと楽しそうに語っていたんだ。これでも。)
(僕と彼がいずれ交した約束も、全てここから始まったんじゃないだろうか)
(彼はもう当たり前の人間じゃなくて、だけど当たり前の人間だったからこそその喪失を知っていたんだ)

「選ばれない悲しさと、中に混ざれない悲しさ」
「どちらが辛いかなんて、それはどうでも良いこと」

あのビルから飛び降りた女性の悲しみに比べたら。